TOP > ポテト日記

記事一覧

行ってこい言霊

まるでスピリチュアルなものに無頓着ではあるのだが、
『言霊』ってやつだけは昔から信じている。

言葉には神秘的な力が宿る。

人を喜ばせる言葉、傷つける言葉。
やる気にさせる言葉。

やっぱり言葉ってのにはなんかある気がするなぁ。

高校1年生のときに、初めて札幌でストリート活動を始めた。
道や公園で詩を書いて売っていたのだ。

「あなたを見て思いついたことを書きます」
筆を使って書くのが流行った時代。
また、キャッチーな絵を添えて
『君はひとりじゃない』みたいのが流行った時代。

私には人の目を見て、瞬時に書くなんて才能はない。
絵なんていうものも論外だ。
しかしながら、そんな手段を真っ向から敵視していた。

文字には言霊が宿るんだ。
考えて、考えて、書いて、消して、書いて、消して。
そうやっているうちに、少しずつ命が吹き込まれるんだ。

そのころから『言霊』というものを大切にし始めた。
冬の路上で1枚100円の詩を売る。
もちろん売れない。

横で店をひらく、ポストカード職人は、
この日も飛ぶように売っていく。

私のは、ただの藁半紙に、ただのボールペンで書いた汚い字。
こんなん買うほうがどうかしてる(笑)

1度、チンピラに絡まれ、
「てめ~、誰に許可とってんだ!」
「す…すいません、すぐたたみます。」

「たたみますじゃねーよ、何売ってんだ、ゴラ!」
「し…詩です」

「あっ?聞こえねーよ!何だ、これはよぉ~!」
「ゆ、夢です。僕の夢なんです」

と言い換えたのは、私の数少ない武勇伝だ。
そのチンピラさんは、そのあと私を散々脅し、
翌日、ジュースをご馳走してくれた。

大学時代も、
私は溝の口の駅前で詩を売る日々。
このころはもっとやりすぎてね~。

『使い捨て詩』と称し、やはり1枚100円。
読んですぐに、捨ててもらうという型破りスタイル。
ゴミ箱を設置し、丸めてポイ!

私が追い求めていたのは『文字が空間を漂う』感覚。
余韻を持って帰ってくださいと。
読み終わった、この紙には何も残っていませんと。
思いっきり自分の世界をぶっちぎったね。
この『使い捨て詩』は見事に売れなかった(笑)

1日中書いて書いて書いて。
時に警官に怒られて、時に酔っ払いにからまれ、
ようやく手にした売り上げは1800円。

その金を握りしめて、そのまま高架下の汚い飲み屋。
1日がビールと日本酒に消えていく。
カウンターで同じくストリートの連中と語る。

「おれ、言葉でな、人に鳥肌たてたいんだ」

不思議な力が宿る。
それは空気中をプカプカ漂う。

カウンターの隅っこ。
自信過剰の若者が酒臭く吐き出した夢は、フワリ線路へ。
はしり抜ける田園都市線の風圧に空を舞う。
静かなビル街を漂い、山の裾野。
私が見た事もない風景を見て回る。
いつの日か、ひょんな偶然で
カウンターで飲んだくれる私の元へ戻ってくる。

そう、信じている。

言葉には力がある。
だから、ビックマウスになろうとも夢を語る。
そうだなぁ。

私はケーブルテレビ大賞をとる。
奨励賞ではなくグランプリを。

行ってこい、言霊。

☆星野 智哉☆

男山直営の謎

月に数回、どこかのビジネスホテルに宿をとり、
その街の繁華街をぶらつくのが趣味。

羽を伸ばす。

いい言葉だ、その通り。
羽をバッタバタにばたつかせ、英気を養う。

帯広に函館に釧路に苫小牧。
でもやっぱり気楽にいけるのはススキノ。

札幌で「金富士」は外せない。
男山直営と書かれた暖簾、真相は謎だ。

ファイル 419-1.jpg

このブログでも度々登場していたのはススキノ店。
今回は狸小路店へ向かう。
こちらのほうが、色々な意味でディープ。
アーケードが終わっても、ひたすら歩き続けると現れる。
昭和情緒漂う界隈だ。

この金富士酒場は、美味く安い。
しかしながら…。

まったくもってオススメしない!!!

店主、超ぶっきらぼうだから覚悟して。
酒を頼まないとガン飛ばされるから覚悟して!

「ここは酒飲むとこだから、飲まん人は帰ってや」

この言葉いただいてフニャフニャになった友人がいるよ。
旭川だと馬場ホルモンが1番近いだろうか。
でもあの店のように客への「愛」はない。

この日は札幌ではしご酒。
先輩と3人でヘロヘロに酔っ払いながらも、狸小路を突き進む。

店に到着。
「いらっしゃいませ」なんて期待して無いけど、やっぱり無い。
空いている席をアゴ先でプイっとさされる。
こんなことで腹を立てる人は、金富士は無理だろう。

ファイル 419-2.jpg

ここは私の大好きなサッポロラガーが飲める店。
酒の強くない友人もいたので、ビール2本注文。

はい、なーーんにも言わず3本きたよ。

ここは酒飲むとこだからね。
けっ!!!

ファイル 419-3.jpg

気をとりなおし、焼き鳥。
まずはもつ串、タレででてくる。
味わいとしてはレバーだね、うまい。

味わいさることながら、このお値段。
なんと4本で220円。
がっはっは。
これだからやめられない、金富士よ。

ファイル 419-4.jpg

金富士で外せないのが「たまごやき」
油タップリで焼き上げるトロトロの逸品だ。

このへんで日本酒にチェンジ。
酒をかえると、お通しがつく。
これも金富士ならでは、良いほうのルール。

ファイル 419-5.jpg

日本酒にはこのおつまみ。
大きなアゲは、どのグループも必ず注文している。
酒はもちろん「男山」

しかし、直営とはどういうことなのだろう。
先輩とその話で盛り上がる。

「よし、星野、俺が聞いちゃる!」
「いやいや、それは怒られますって!」

「大丈夫、サラッと会計のときにさ!」

先輩はさっそうとレジへ。
私と友人は固唾を飲んで、その時を待つ。
この先輩、物腰も柔らかく、口調も穏やか。
話の切り出しかたも上手なので、期待大!

「ごちそうさまでーす、おあいそお願いします!」

はいよーと、店のお母さんが対応する。
その横では、例の親父が仏頂面で焼き鳥を焼いている。
ちらっと親父の位置をはかる。
ほんとうに、やるきだ…。

会計のお釣りを待つ間、
場つなぎ的にお母さんに話しかける。

「いや~、今日も美味しかったです」
「ありがとうございます」

おっ、いい感じにキャッチボールを始めたぞ。

「いつもは僕、ススキノの本店なんですよ」
「ああ、そうですか」

「こちらの2号店は初めてきました」

ははは、すっかり自分のペースにもってった。
親父もチラッと気にしているそぶり。
いいぞ、いいぞ。

しかし…、お母さんの様子が変だ。
イラッとした表情でレジスターを叩いている。

「あの暖簾にある男山直営って…。」
先輩の質問を遮るようにお釣りを突き出し、大声で一喝。

はっ?2号店?ウチは支店!しーーてーーん!!!

先輩は中ボス、オカンの会心の一撃をくらい撃沈。
よし、次は俺が行きます。
金富士、いいとこですよ。
声が枯れるほど夢を語った大切な場所です。

☆星野智哉☆

尾道ラーメン

尾道ラーメンを食べずして帰るなんて!
そんなこたぁ~、許されません!

ホテルで
「地元の人に人気のお店」で教えていただいた。
ファイル 417-1.jpg

店の前。
えっ…ここって感じ。
古いっすね~、いいっすねぇ~。
こういうの最高に好きですよ。
他の尾道ラーメン店に比べ、断然古い。

お店の名前は「みやち」。
帰ってきて調べたら、人気店のようでいつも行列みたい。
この日は平日だったが、それでも店内は満席。

ファイル 417-2.jpg

あの~、ずいぶん安くないですか???

値段が昭和で止まっているようです。
さて、尾道ラーメンの登場。

ファイル 417-3.jpg

名物は天ぷら入りなんだって!
蕎麦ならわかるけど珍しいよね、天ぷらとラーメンの組み合わせ。

スープはあっさり、しかしコクがある。
なんだろう、あってるかわからないけど、
旭川でいうラードの代わりを天ぷらがしている感じ。

じわ~っと油が溶け出し、独特の深みを出している。
旭川も魚介スープだが、尾道ラーメンはダシって感じ。
塩分が控えめなぶん、濃縮された風味がストレートに広がる。

おいしいラーメンでした!

ファイル 417-4.jpg

尾道の最後は、
千光寺公園にある《文学のこみち》
ここは文学者たちの作品が碑として数多く残された場所。
やっぱりこの絶景は何か創作意欲を掻き立てるんだな。

ファイル 417-5.jpg

写真は林芙美子・放浪記の碑を前に。
例によって放浪記は読んでいないのだが、うれしそうな表情で。

このあと旭川に戻り、
これぞまさに速攻で山岡家に行った。
尾道の人に、教えてあげたい。

☆星野 智哉☆