まるでスピリチュアルなものに無頓着ではあるのだが、
『言霊』ってやつだけは昔から信じている。
言葉には神秘的な力が宿る。
人を喜ばせる言葉、傷つける言葉。
やる気にさせる言葉。
やっぱり言葉ってのにはなんかある気がするなぁ。
。
。
高校1年生のときに、初めて札幌でストリート活動を始めた。
道や公園で詩を書いて売っていたのだ。
「あなたを見て思いついたことを書きます」
筆を使って書くのが流行った時代。
また、キャッチーな絵を添えて
『君はひとりじゃない』みたいのが流行った時代。
私には人の目を見て、瞬時に書くなんて才能はない。
絵なんていうものも論外だ。
しかしながら、そんな手段を真っ向から敵視していた。
文字には言霊が宿るんだ。
考えて、考えて、書いて、消して、書いて、消して。
そうやっているうちに、少しずつ命が吹き込まれるんだ。
そのころから『言霊』というものを大切にし始めた。
冬の路上で1枚100円の詩を売る。
もちろん売れない。
横で店をひらく、ポストカード職人は、
この日も飛ぶように売っていく。
私のは、ただの藁半紙に、ただのボールペンで書いた汚い字。
こんなん買うほうがどうかしてる(笑)
1度、チンピラに絡まれ、
「てめ~、誰に許可とってんだ!」
「す…すいません、すぐたたみます。」
「たたみますじゃねーよ、何売ってんだ、ゴラ!」
「し…詩です」
「あっ?聞こえねーよ!何だ、これはよぉ~!」
「ゆ、夢です。僕の夢なんです」
と言い換えたのは、私の数少ない武勇伝だ。
そのチンピラさんは、そのあと私を散々脅し、
翌日、ジュースをご馳走してくれた。
。
。
大学時代も、
私は溝の口の駅前で詩を売る日々。
このころはもっとやりすぎてね~。
『使い捨て詩』と称し、やはり1枚100円。
読んですぐに、捨ててもらうという型破りスタイル。
ゴミ箱を設置し、丸めてポイ!
私が追い求めていたのは『文字が空間を漂う』感覚。
余韻を持って帰ってくださいと。
読み終わった、この紙には何も残っていませんと。
思いっきり自分の世界をぶっちぎったね。
この『使い捨て詩』は見事に売れなかった(笑)
1日中書いて書いて書いて。
時に警官に怒られて、時に酔っ払いにからまれ、
ようやく手にした売り上げは1800円。
その金を握りしめて、そのまま高架下の汚い飲み屋。
1日がビールと日本酒に消えていく。
カウンターで同じくストリートの連中と語る。
「おれ、言葉でな、人に鳥肌たてたいんだ」
不思議な力が宿る。
それは空気中をプカプカ漂う。
カウンターの隅っこ。
自信過剰の若者が酒臭く吐き出した夢は、フワリ線路へ。
はしり抜ける田園都市線の風圧に空を舞う。
静かなビル街を漂い、山の裾野。
私が見た事もない風景を見て回る。
いつの日か、ひょんな偶然で
カウンターで飲んだくれる私の元へ戻ってくる。
そう、信じている。
言葉には力がある。
だから、ビックマウスになろうとも夢を語る。
そうだなぁ。
私はケーブルテレビ大賞をとる。
奨励賞ではなくグランプリを。
行ってこい、言霊。
☆星野 智哉☆