TOP > ポテト日記 > 2011年10月17日

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行ってこい言霊

まるでスピリチュアルなものに無頓着ではあるのだが、
『言霊』ってやつだけは昔から信じている。

言葉には神秘的な力が宿る。

人を喜ばせる言葉、傷つける言葉。
やる気にさせる言葉。

やっぱり言葉ってのにはなんかある気がするなぁ。

高校1年生のときに、初めて札幌でストリート活動を始めた。
道や公園で詩を書いて売っていたのだ。

「あなたを見て思いついたことを書きます」
筆を使って書くのが流行った時代。
また、キャッチーな絵を添えて
『君はひとりじゃない』みたいのが流行った時代。

私には人の目を見て、瞬時に書くなんて才能はない。
絵なんていうものも論外だ。
しかしながら、そんな手段を真っ向から敵視していた。

文字には言霊が宿るんだ。
考えて、考えて、書いて、消して、書いて、消して。
そうやっているうちに、少しずつ命が吹き込まれるんだ。

そのころから『言霊』というものを大切にし始めた。
冬の路上で1枚100円の詩を売る。
もちろん売れない。

横で店をひらく、ポストカード職人は、
この日も飛ぶように売っていく。

私のは、ただの藁半紙に、ただのボールペンで書いた汚い字。
こんなん買うほうがどうかしてる(笑)

1度、チンピラに絡まれ、
「てめ~、誰に許可とってんだ!」
「す…すいません、すぐたたみます。」

「たたみますじゃねーよ、何売ってんだ、ゴラ!」
「し…詩です」

「あっ?聞こえねーよ!何だ、これはよぉ~!」
「ゆ、夢です。僕の夢なんです」

と言い換えたのは、私の数少ない武勇伝だ。
そのチンピラさんは、そのあと私を散々脅し、
翌日、ジュースをご馳走してくれた。

大学時代も、
私は溝の口の駅前で詩を売る日々。
このころはもっとやりすぎてね~。

『使い捨て詩』と称し、やはり1枚100円。
読んですぐに、捨ててもらうという型破りスタイル。
ゴミ箱を設置し、丸めてポイ!

私が追い求めていたのは『文字が空間を漂う』感覚。
余韻を持って帰ってくださいと。
読み終わった、この紙には何も残っていませんと。
思いっきり自分の世界をぶっちぎったね。
この『使い捨て詩』は見事に売れなかった(笑)

1日中書いて書いて書いて。
時に警官に怒られて、時に酔っ払いにからまれ、
ようやく手にした売り上げは1800円。

その金を握りしめて、そのまま高架下の汚い飲み屋。
1日がビールと日本酒に消えていく。
カウンターで同じくストリートの連中と語る。

「おれ、言葉でな、人に鳥肌たてたいんだ」

不思議な力が宿る。
それは空気中をプカプカ漂う。

カウンターの隅っこ。
自信過剰の若者が酒臭く吐き出した夢は、フワリ線路へ。
はしり抜ける田園都市線の風圧に空を舞う。
静かなビル街を漂い、山の裾野。
私が見た事もない風景を見て回る。
いつの日か、ひょんな偶然で
カウンターで飲んだくれる私の元へ戻ってくる。

そう、信じている。

言葉には力がある。
だから、ビックマウスになろうとも夢を語る。
そうだなぁ。

私はケーブルテレビ大賞をとる。
奨励賞ではなくグランプリを。

行ってこい、言霊。

☆星野 智哉☆