TOP > ポテト日記 > 2011年06月18日

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コツーンが聞きたい夜もある

夏の夜になると思いだす。

高校時代、私の部屋は2階。
友達が、窓に割れない程度の小石をぶつけてくる。

勉強熱心な高校生ではなかったので、
遅くまでパンクロック聞きながら、詩を書く日々。

唐突にコツーンと窓に石が当たる音。
下を覗き見ると、チャリンコ乗った同級生が、
してやったりの表情でニタついている…。

お前は夜中の2時に何やってんだ!

え?公園?
待て!親が起きるから、あんまり騒ぐな!
わかった、とりあえず降りるから。


携帯も無い時代。
俺らは小石を使って合図したっけな。
あてもなく、抜け出した家。
目指す、深夜の公園。

池のボートはギッシギシにつながれていて、
街灯には、不思議と虫の一匹もばたついていない、静かな夜。

夜の公園は不思議な匂いがする。
湿った池の藻が夜風に吹かれる香り。
あれこそまさに、青臭い「青春」だ。

アイツが持ってきたタバコに、
俺が持ってきたライターで火をつけて。
自販機で買った砂糖タップリの炭酸飲料をグビグビやりながら。
免許、彼女、バイク、音楽の話を永遠に繰り返す。

非行と呼ぶには、早いよ、おまわりさん。
あれは俺にとって、本当に大切な時間だったんだ。

馬鹿なアイツは駅のホームでタバコに火をつけ、
そのまま停学。
だから、今度は俺がアイツの家を自転車で目指す。

小石を放り、窓にコツーン。

大人の階段を登る不安。
将来への1歩を踏む躊躇。
蛍光灯はそんな不安定な夜を遠慮なく照らしている。

アイツの部屋も。
アイツの部屋も。
アイツの部屋も。

外から見る、友達の部屋の明かりはどれも頼りなく。
夜も更けているのにいつまでも、消える気配は無い。

そこにコツーンと小石をぶつける。
してやったりの笑顔を浮かべて。
その不安な夜を共に過ごそう、深夜の公園で。

思い悩む、大人の俺。
もう寝たらいいのに、ズルズル起きている深夜。
誰か、俺の窓にコツーンとやってくれないか。
すぐに降りていくよ、タバコはやめたがね。


あてもなく、どこかへ。


☆星野 智哉☆