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閃きを待つ

ぶらぶら散歩をしていたら、突然頭に稲光。

『図書館に飼い慣らされた静寂を解き放て!』

という言葉が降ってきた。

昔から物語を創作するのが好き。
机に向かって書くというよりは、フイをついて閃く。
これを種に作品を書いていくのだ。

今年、プラタナス大賞・入賞をいただいたのだが、
その作品の中に登場する言葉。
『プラチャナスのうんこ舞う』は、
橋の上から川を眺めている時だった。

このフレーズが浮かんだ直後、一気に全編が降ってくる。

(『プラチャナス』もし時間があれば読んでみてください)↓↓↓
http://www.hokkaido-1ban.jp/platanus/platanus_no3_04.html

こういった閃きは文学だけではなく、仕事においても同じ。

最近、企業ドキュメンタリーで建具職人に密着。
無事に放送は終了したのだが、あの原稿は本当に悩んだ。
30分番組をナレーションベースで作ると、
それはそれは大変な枚数の原稿が必要になるのだが、
これまた困ったことに、ピクリとも浮かんでこない。

日本の建築文化を支えてきた建具。
職人になるには、厳しい修行が必要となる。
密着してわかった大変さ、つらさ。
それを文章にできず、書いては消してを繰り返す。

やっと、ひねりだしてもニュース原稿のよう。
事実だけが並んでいて、無機質。
人に迫っているのに、温もりを言葉で表現できない。

そこで歩いて歩いて歩いて。
ああ、もういよいよダメかと諦めかけたときに、

『伝統を守っているうちに仕事が減った』というフレーズ。

背中で語る。
その職人魂を邪魔しない言葉。
原稿として、目立ちすぎず、それでいて耳に残る余韻。
これが良いのか悪いのか、それはわからないのだが、
ディレクターとして自信を持ってこの一言を添えた。

一つ浮かべば屁の河童!
次から次へと洪水のように湧き出てくる言葉たち!
『伝統』と『未来』の狭間で葛藤する職人。
私は密着で感じたままを素直な言葉で紡ぐことができた。

これでもかと脱線したが、
『図書館に飼い慣らされた静寂を解き放て』って何?
映画とかできそうなんですけど???
主人公募集!君が解き放て!


(図書館には、静寂が住んでいる。
受験生の熱心な鉛筆の音に気だるい舌打ち。
安部公房の「箱男」と「砂の女」の隙間に、ペラリと挟まり、
こちらの様子を伺っている。
試しに私が大声で『吾輩は〜!』と叫んでみようか?
静寂が奪われた瞬間、そいつは一目散に逃げるんだ。
反射的に夏目漱石の棚に隠れたようだが、静寂よ。
よく見ろそこは、ナンシー関だ。)

うーん、ダメだ。
よくわからん…。主人公、なおさら募集!

☆星野 智哉☆