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火葬場とアラスカ

最近死んじゃった飼い猫。
そのバカたれとの思い出話を少々。

あれは高校生の夏休み。

朝起きたら、何か臭い。
うんちくさいというか…、なんというか…。
夏の暑さで腐敗したような、
何か死んでるんじゃないかと思うような臭い…。

ゆっくりと目を開く。

んっ?何かある…。
目の前にありすぎて、ピントが合わない。
頭をすっと上げて確認すると…。

キレイな鳥が死んでいる。

なんだろうな、これ。
枕元に鳥の死体だよ、覚えないな。
それにしても、尾の長いキレイな鳥だ。

そう、猫が狩ってきたんだね。
飼い主にそっと献上したんだね。

いらないよネコさん、僕は興味ない。
こんなキレイな鳥を可愛そうに…。
せめて私が『野鳥の会』にでも入ってたら、いいリアクションできたのに。

そんな猫が先日、老衰のため死去。
寂しいけどね、もう笑い話ができるから大丈夫。

驚いたんだけど、
猫も火葬場に連れてってね。
ペット専用の霊園ではなく、人間と同じ火葬場。

早朝、人間が出棺されるまえの時間に来てくれと。
そこにペット専用の焼く場所があるんですよ。

家族も泣き泣き。
最後に大好きだった毛布でネコさんを包んでね。
ホント、人間と一緒。
使ってたおもちゃとか、エサのカリカリとか入れてあげて。

普通はここで涙ながらに終わるんだろうけど、
そこで一筋縄にいかないのが度々登場するオカン…。

泣きながら、ネコさんの好物だった『アラスカ』を手に…。


あっ、アラスカってわかりますよね?

ビニールで一本ずつ包まれてるカニカマです。
酒のつまみにピッタリ、サラダにも最適。

『ネコさん…。大好きだったアラスカ持っていきな…』

火葬場に響く『アラスカ』という単語。

うん、これはシュールだね。
過去にない言葉だね。
その時は悲しくて、なんとも思わなかったけど、
オカン、シュールだよ、火葬場でアラスカは。

死後硬直のネコさんの腕をむりやり広げて、
アラスカを突っ込むオカン。

ネコさんはアラスカを大切に抱っこしているように見える。

そのまま、火葬場の扉が閉じ、永遠の別れ。

ネコさーん!
ネコさーん!と泣く星野家御一行。


遺族控え室もちゃんとある。
そこで待つ。

妹は憔悴しきった様子で目を腫らしている。
父親もうなだれている。
オカンはまだあの話…。

「ネコさんアラスカ持って逝ったわ…」

だーーーかーーーら!!!!!

好きなのはわかった!
たしかにネコさんはアラスカばっかり食べてた!!!
ご飯の支度してると、匂いで察して来たよな!
キッチンの床でよくもらってたの覚えてるよ!

だけど!!
聞いてよ、お母さん!!!!

『火葬場』と『アラスカ』

この単語は並ぶとすごい破壊力!!!!!
笑ったね。
不謹慎だけど、笑ったね。

ネコさんへ。
好きだったか嫌いだったかわかりませんが、
お前がいつもピアノの上から眺めていたウチの茶の間。
きっとこんな感じだったろ?
火葬場に来ても、いつもどおりの賑やかな家だろ?
寂しいけど、家族みんな、元気にやってるよ。
アラスカ食ったか?
いっつもビニールとってやってたからな。
表面のツルツルは食えんぞ、気をつけろ。。
天国でキレイな鳥捕まえて、待っててくんろ。

☆星野智哉☆