親切でありたいと思うのだが、
いや、しかし。
これはおせっかいではないのかと悩む。
どうも色々なことが気になるタイプであり、
ああでもない、こうでもないと声を出してしまうのだ。
親切とおせっかいの境界線は実に曖昧で。
例えば、アイツ。
小学校3年生、クラス替えの朝。
ああ、仲の良い友達と同じクラスだったらな。
担任の先生は誰だろう。
クラスのマドンナとは、離れてしまうだろうか。
期待と緊張を胸に、クラスの振り分けが書かれた、
大きな模造紙の前。
そこにアイツ登場。
「星野、俺と同じクラス!担任はちょっとな…、佐藤先生!」
(コイツ…、探すドキドキ感もあったものでない!)
「おっ…、おう。これからも一緒だな!」
それはさておき、他にクラスメイトは誰がいるんだと、
模造紙に書かれたゴマ粒みたいな名前を追っていく。
「星野、喜べ!鈴木も高橋も一緒!でも佐々木は別!」
アイツ。
私の欲しい情報は全部、教えてくれたよ。
これは親切か?それともおせっかいか??
私は、親切なのだと思う。
大いに考える部分はあるのだが、これは親切だ。
おせっかいに片足つっこみながらも、ギリギリ親切だ。
。
。
次の事例。
同じく小学校3年生の下校時。
登場人物も、同じくアイツ。
冬の寒い日。
晴れてはいるものの、空気がキンッと凍える夕暮れ。
外に4、5匹の犬をつないでいる家があった。
真っ白い雪がフンや尿で汚れていた。
だから、私たちはその家の前を通るとき、
大げさに息を止め、うわ~っと走ったのだ。
大して臭くもないのに、
「くっせ~、ダッシュでいくぜ!」なんてな具合に。
その日の帰り道はアイツと一緒。
いつものように、その家の前に差し掛かったとき、
アイツはおもむろに、自分の耳あてを外したんだ…。
犬のウンコ臭いから、これで鼻おさえな!
その耳あての方が、
よっぽど臭かったんだ…。
アイツはそれから、毎日。
犬の家の前で、自分の耳あてを外し、私の鼻に押し付けたんだ。
これは親切か、おせっかいか。
どう考えても、親切だ。
迷う余地は全く無い。
寒空の下、自分の耳あてを外す優しさ。
自分は鼻をつまむこともせず、友の鼻を耳あてでふさぐ優しさ。
私は親切でありたいと思う。
しかし、おせっかいにはなりたくないと考える。
そういう時、アイツのことを思い出す。
人のことを本心で思えば、誰がなんと言おうと親切である。
よし、言おう。
。
。
「矢野っち、連休でちょっと太った?いや、気のせいか!」
☆星野智哉☆